クルマで遠足

クルマに乗って、出かける気軽な旅の記録。

Vol.010

ホンダ フィットで行く、伊豆松崎町

なまこ壁と言って、すぐにどういう壁なのか思い出せる人は少ないだろう。今回は、この不思議な名前を持つ壁の家が立ち並ぶ、伊豆半島南西の小さな町、松崎町へ新型のフィットで向かった。 伊豆には、何度も行ったはずなのに今更ながら思うのは、本当にこの半島は広いということ。夜明け前の東京を出発し、朝焼けに追われながらようやく太陽の光に照らされた富士山を拝むことができたのは、100キロほど走った足柄SA付近。さらに、沼津インターを降りて国道246号→1号→136号と乗り継ぎ、伊豆半島を南へ南へと下っていき修善寺、西伊豆の海岸沿いを走り、有名な恋人岬なども走りすぎていく。そして、ようやく松崎にたどり着いたのは、すでに出発から4時間ほど経った10時前だった。

まずは、なまこ壁は何たるかを確かめに、街でも随一のなまこ壁通りへ向かった。ありました!ブヨブヨのなまこが壁一面に、ぴったりと貼り付いている!う~気持ち悪い。 というのは、もちろんウソで黒壁に白くもっこりとした菱形模様がびっしりと美しくデザインされている。写真にあるのは、もとは薬問屋だった近藤家の本宅と倉庫で、江戸末期の建築物。このなまこ壁は平瓦(ひらかわら)でできていて、その目地になまこのような漆喰を塗りつけているそう。触ってみるともちろん硬いのだけれど、半円筒に塗られたやわらかなラインは、とても温かみが感じられる。少し視線を上げてみると冬の雲ひとつない真っ青な空と建物がいっぱいに広がり、現代であることを忘れてしまいそうだ。 この近藤家の他にも、周囲には古い商家が残っている。商家だった中瀬邸は室内も公開されていて、当時の様子が伺える。他にも数軒、大きななまこ壁の屋敷が残っている。庭には洗濯物が干され、未だ住まいとして現役で活躍しているのを見ると、改めてこのなまこ壁の住まいが、剛健さを感じた。

なまこ壁という高度な左官技術を極めた名工も、この松崎町は生んでいる。それが伊豆の長八と呼ばれる入江長八だ。文化12年(1815年)松崎に生まれた長八は、手先の器用さを買われ少年時代に村の左官棟梁に弟子入りし、その後江戸へ出て狩野派の絵師に日本画を学ぶ。そこで、すでに持っていた左官技術と日本画を組み合わせ、新たに鏝絵(こてえ)という新しいジャンルを創造した。漆喰に漆などを混ぜ、白以外の様々な色を出し、それを何層にも鏝で塗っていく。平面だった絵は立体的になり、より生き生きとしていく。絵画とも彫刻とも言えない、その独特な存在と色合いで江戸でも随一の名工として認められ、浅草観音堂、目黒祐天寺、成田不動尊などに作品を残した。しかし、関東大震災によりその作品のほとんどは焼失してしまったが、松崎町の伊豆の長八美術館と浄感寺に数十点の作品が展示されている。

伊豆の長八美術館は、なまこ壁や漆喰壁を活かしながらも、西洋風のモダンな雰囲気も漂う独特な建物。そして、中に入れば精細な長八の作品が並んでいる。入館の際に借りた虫眼鏡で近づいてみると、本当に細かい。木々の枝や葉から海の波。ちょっと変な表現かも知れないが、プラモデルのジオラマのようだ。それを漆喰と鏝で作ったのだから、すごい技術力だ。長八の才能は、鏝絵だけでなく絵画でも発揮されたことは、長八美術館向かいの浄感寺に行くと理解できる。こちらは、撮影禁止だったので写真がないのだが、本堂天井に描かれた八方にらみの龍の凄みは、日光東照宮の鳴竜に勝るとも劣らないもの。見る角度によって表情を変え、日光の加減によって黄色い目玉がギラつくなど、高度な技巧が用いられている。他にも天女の鏝絵も妖艶で、今にも目の前で踊り舞うかのようだった。

ここで、一休みして松崎町の新たな一面、そう港町であるから食事も一級品であることも楽しんだ。浄感寺近くの食堂に入って、新鮮な魚を満喫した。頼んだのは、漁師料理由来のあじまご定食。待ち時間も30分以上あったが、それ以上に驚いたのがそのボリューム。普通アジのたたきはホンのひと盛程度だが、どんぶり一杯に入っている。まずは、これをホカホカのご飯に盛って、にんにく醤油をひとかけして平らげる。もうこれ以上ないほどの美味さ。そして、二膳目はこれにプラスして、特製のだし汁をかけてお茶漬け風にしていただく。これも、最高。さらにデザートには、食べ放題のところてん。しめて1,570円。もうこれでだけでも松崎に来た甲斐があった思えるほどだった。

遅い昼飯の後は、伊豆半島最古の学校といわれる岩科学校へと向かった。重要文化財に指定されている建物は、当時いかに学校が重要な存在であったかを物語る立派な建物だ。明治10年(1880年)に建てられ、ここでもなまこ壁が使われている。校舎の中の造形も凝っていて、長八が描いた千羽鶴や美人賞蓮図なども美しい。 この小さな伊豆の港町に、花開いた生活文化は伊豆の長八ただ一人の力でなく、すべて住民の寄付で建てられた小学校を見ることでも伺うことができる。正直、現代でも決して便利な町ではないと思うが、他のどこの町とも違う揺ぎ無い個性を感じることができた。


取材協力:本田技研工業
http://www.honda.co.jp/


今回のドライブコース =伊豆松崎へ=


首都高→東名高速沼津IC→国道246号→国道1号→国道136号
◆片道料金3,700円
◆所要時間4時間

オオキの「これだけは言わせて!」

ホンダ フィットL

ボディカラー:プレミアムホワイトパール
車両本体価格134万4,000円

一見すると、何が変わったのかよく分からないと思われてしまうかもしれないが、それが良いところだろう。モデルチェンジ直前の販売台数でも国内3位をキープしていた、超ロングセラーモデルだ。ライバルのデミオが一転して、デザインも一新したのに比べ、フィットはコンセプトをキープしたまま、より使い勝手や燃費、走りをブラッシュアップしてきた。

一目で変わったと感じるのがデザイン部分だとフロントだろう。より前傾姿勢が顕著になり、ボディラインも鋭さを増し、こいつは走りそうだという雰囲気を発している。インテリアもより質感を増し、かなり高級感が漂っている。また、視界も広くシートポジションも高いので、運転の苦手な人でも緊張感を強いられる場面はきっと少なくなるはずだろう。

もちろん走りも太鼓判と言ってよいだろう。新型のCVTは滑らかで、加速感も充分。本当に1.3リッターなのかと思うほど。グイグイ加速して引っ張ってくれるし、ボディもしっかりしているので少々キツイ乗り方をしても、恐怖感を覚えない。

日本のみならず全世界が注目をした、このフィットのニューモデル。きっと先代からの買い替えはもちろん、新たなユーザーも掴むことは間違いないだろう。今後の売れ行きにも大注目だ。

※この記事は2008年1月08日現在の情報です

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