
その木は、雑居ビルと古びた住居の合間にひっそりと佇んでいた。背の高いことだけが取り柄で、他に特徴はないように思えた。しかし、桜の木が花を散らし、枝が緑の葉に包まれだした頃、背の高い木はただの雑木でないことを明らかにする。小さな紫色のつぼみが見る見るうちに花を咲かせ、辺りにうっすらと甘い香りを運ぶ。枝はゆったりとしだれ、浮世絵の美人画のように、艶かしくなっていく。花だけを見れば、公園などで枝を広げている藤の木にも思えたが、あれほど背の高い藤の木は見たことがない。この時期になると毎年、藤の木なのかどうか気になっていた。
今年も、その季節が近づいていた。しかし、背の高い木が長年居所にしていた敷地は、にわかに騒々しくなっていた。建物はビニールシートに覆われ、6本の爪を持った大型の重機が運び込まれた。新しいビルを建てるための解体工事が始まったようだ。もう時間はあまりないように思えた。あの木は果たして藤の木なのかどうか確かめたいと思い、藤の木で有名な栃木県・足利市のあしかがフラワーパークへ、カローラフィールダーで向かった。
最寄の佐野藤岡ICまでは、わずか2時間程度。その数値以上にパワフルな走りの1.8リッターエンジンは、スピード感も安定感も心地よく、はやる気持ちを和らげてくれた。インターを降りてしばらくすると、田植え前の田んぼの中に警備会社のクルマが数台止められていた。何事かと思いながら、交通誘導員の指示に従っていくと、いつの間にかあしかがフラワーパークの駐車場に辿り着いた。フラワーパークが多くのお客であふれているのは、珍しい。臨時駐車場も満車に近づいているようだ。入場料は1,300円。ちょっと高いかなと思ったが、この料金は日替わりで、上限一杯の料金のよう。つまり、名物の藤の花が満開である証のようだ。
園内は、やはりたくさんの人で賑わっている。その驚きを上回るほどなのが藤の花だ。白藤の回廊と名づけられた80mにもおよぶトンネルは、中に入り見上げると真っ白な花が雪のように鼻先まで近づき、甘い香りが鼻腔をくすぐる。風にゆられると花びらが、ゆらゆらと地面へ落ちる。大きなクマバチが、人など気にすることなく優雅に花から花へと移り飛んでいる。ここは彼らにとっても楽園のようだ。
園内にはさらに、満開の藤が花を咲かせている。その中でも随一の「大藤」は10年ほど前に、移植されてきたもの。ロングヘアーの三編みのような花房が地面までの空間を狭め、紫色の世界を描き出す。その香りとともに目眩がおきそうなほどだった。さらに、他にも珍しい黄色の花を咲かせた藤や、黄色や赤のポピー、つつじ、睡蓮が咲き誇っていた。しかし、あの背の高い藤の木に似たものは見つからない。近くの係りの方に聞いてみると「藤の木は、しっかりとした支えがないと、大きく伸びることはありません。しかし、花が似ているのなら藤なのかもしれませんね」とのことだった。どちらなのだろうと考え、ベンチに腰掛ていると、心地よい風景と香りに包まれ眠気を感じた。夢の中で、あの背の高い藤のイメージが揺れている。呼び出されているかのような気もしたが、まだ時間はあった。もう少し足利の街を楽しむことにした。
先の藤の彩りとは違い、足利学校は黒や焦げ茶のモノトーンの世界だ。主な建物は15年ほど前に再建されたものとは言え、室町時代までは優にさかのぼる事ができる日本最古の学校としての威厳を保っている。儒学の祖である大きな孔子像、多くの学生が学んだ方丈という茅葺の建物などを見ると、最高学府としての誇りを感じる。その緊張した気持ちで、今度は足利学校裏の鑁阿寺(ばんなじ)を訪ねた。ここは寺というよりも、武家屋敷に近い。建物の周囲を堀と土塁で囲んだ珍しいつくりだ。シンメトリーで大きな瓦屋根が印象的な本堂を見ても、室町幕府を興す足利氏の潜在能力のようなものを感じた。
東京へ向かう帰り道は、春の嵐に見舞われた。雷が鳴り響き、大粒の雨がフロントガラスを叩いていた。都内へ入るころには雨も上がったが、待ち受けていたのは長い渋滞だった。会社に着いたころには日も落ち、家路を急ぐ人が駅へと連なっていた。いつもと変わらない風景だったが、背の高い木は違った。幹の途中から真っ二つに折られ、絶えていた。折られた断面は鋭く裂かれ、割れ、その色は人肌のようだった。花を最後まで咲かせることができなかった無念さが、形になっているようだった。
結局、藤の木なのかどうかは分からないままになった。だけどあの花は、心の中では丁度、満開を迎えている。
首都高→川口JCT→東北自動車道→佐野藤岡IC
◆片道所要時間約1.5時間
◆片道料金2,450円
カラー:カッパーメタリック
車両本体価格:\2,068,500.-
カローラアクシオとずいぶん印象が違うなとまず思った。それは、もちろんセダンとワゴンと言う違いだけではない。想像以上にスポーティな走りに、軽い驚きを覚えるほどだった。新開発の1.8リッターエンジンは、その数値以上にパワフルさを感じる。アクセルを踏み込んでからの滑り出しはもちろん、高速でのクルージングの安定感もしっかりとしている。ワインディングも、シーケンシャルシフトマチックに切り替えれば、かなり楽しめる。
ワゴンとしての使い勝手も、一流といえるだろう。後席がラゲッジスペース側面のレバーひとつで畳まれるのは、何とも便利。大きな荷物を抱えているときには、ラゲッジ側から操作した方が絶対に楽なので、とても良い設定だと思う。また、運転席を中心に配置されたポケットの豊富さと使いやすさも良い。ここにはCD、ここには地図、ここには携帯電話と、しっかりと入れられる物が想定されているのが良く分かった。
デザインもカローラらしからぬ精悍さを感じるフロントをはじめ、車高も低くスポーティな感じを全体から受ける。また、ボディサイズもしっかりと5ナンバーサイズにまとまっているので、取り回しもかなり楽だ。今までカローラが選択肢に入っていなかった人にこそ、興味を持ってもらいたい一台だ。
取材協力:トヨタ自動車 広報部
http://www.toyota.co.jp/
※この記事は2007年5月22日現在の情報です