
坂の向こうは、青と緑の世界だった。そんな表現をしたくなる絶景が東名高速にある。静岡県に入り、山間の道に疲れを感じたころ、突如フロントガラスいっぱいに広がる海と山。真っ青な海は、駿河湾。ふもとに古風な集落を抱いている小高い山が、薩?峠(さったとうげ)。以前からこの風景が気になり、そして気に入っていた。時間があれば必ず、この景色を楽しめる東名高速の由比パーキングエリアで一息ついて海と山、そして街を眺めた。しかし、パーキングエリアということで外には出られない。古風な家並みも海岸も歩くことはできなかった。
そこで今回は経由地でしかなかった由比を目的地にした。名前と顔は知っているが、話したことがない人に会いにいくような気分だ。クルマはホンダのニューモデル、クロスロード。桜が散りかけた東名を西へと走り続ける。由比という街の素顔は一体どうなんだろう。そんなことを考えながら、ステアリングを握った。
東京からだと最寄りICは富士になる。そこから国道1号へ抜け山側を走ると、記憶にある風景になってきた。山にへばりつくように家がひしめき合っている。街の入り口近くの駐車場にクロスロードをとめ、ここからはゆっくりと歩くことにする。東海道の宿場町だった面影を残す由比は、日本らしく懐かしい街並みだ。さらに、子供たちは「こんにちは」と挨拶してくれる。おじいちゃん、おばあちゃんが小さな孫の手をひいて、散歩をしている。街並みだけでなく、暮らしの営みも少しノスタルジックだ。
今も街のメインストリートである旧東海道は桜えび通りと名前を変え、その名の通り特産である桜えびを売る店が多い。生や釜揚げなど、薄ピンクに染まった無数のえびがこちらの食欲を刺激してくる。そこで、まだ到着早々だが玉鉾という老舗の料理屋で、桜えび料理を食べることにした。中に入ると、観光客でほぼ満席だ。みなおいしそうに、桜えびを口に運んでいる。僕も桜えび定食を早速頼んだ。お盆の上には、これでもかという程の桜えび料理。生、釜揚げ、そして掻揚げ。生の桜えびは透明で、するっと口から喉へ通り抜け、とても上品な味わい。釜揚げは、えびらしい少しこってりとした味わいが強くなり、見た目もより桜色になっている。そして掻揚げ。サクッとした歯ごたえに、舌を酔わせるような濃厚な味。由比に来て本当によかったと感動するほどの贅沢な昼食になった。
この桜えびが水揚げされるのは、由比漁港だ。国道1号線をくぐり海側へ出ると想像以上の大きな港が目の前に現れる。4月上旬に初漁を迎えた桜えび漁は最盛期を迎えたようで、100隻以上の漁船がひしめきあっている。こんな間近で水揚げされているのだから、さっきの料理がおいしかった訳だ。まさしく採れたて、釣りたての桜えび料理だったのだ。漁師さんの日焼けした顔もまぶしく、充実感が窺える。きっと由比の街が一番元気な時期なのだろう。
桜えびの後は、絶景を求めて薩?峠(さったとうげ)へ向かった。途中、このあたりではもっとも旧東海道の面影を残す、倉沢・寺尾地区を通り抜ける。小さなくぐり戸を残した格子造りの家が連なり、旅情がかきたてられる。そして、心地よい上り坂。軽く息をきらせながら街を抜けると、今度は甘夏の森が続く。ちょうど収穫時期を迎えたようで、思ったよりも背の高い木には、あふれんばかりの甘夏が実っている。そして、その横では少々花びらを落としているが、桜も咲いている。甘夏が茂らせる濃緑の葉をバックに、オレンジ色の実、ピンクの花、グリーンの新芽が美しく溶け合い、春の風景を品よく描きだしている。ふもとから数えると30分以上は歩いただろうか。ようやく展望台へたどり着いた。
ここからの富士山の眺めは、最高なのだが…。残念、頂上付近のみならず稜線全体にまで雲がかかって、かなり距離的に近いはずの富士山が、どこにあるのかもわからない。しかし全体を見回せば、その思いも消し飛ぶ。向こうには、大きく伊豆半島が横たわり、海にはまだ漁船が漂っている。眼下では東名高速・国道一号でクルマがせわしなく行き交っている。馴染みのある風景を上から見るのも悪くない。いい気分だ。
帰りには、大名や幕府の役人が泊まった由比本陣公園に立ち寄った。素晴らしい門構えの本陣も、今では観光客や子供たちが集まる憩いの場だ。中に入ると、桜えびが水槽で飼われていた。頭を底の方に向けて、泳いでいるというよりは、逆立ちしているようだ。「あの少し赤っぽいやつ、もうすぐ死ぬぜ」と子供の声が聞こえた。大人の悪い癖なのか、「本当かな」と疑った。しかし、よく見ると水槽の底で動かなくなった屍骸を見ると、店先に売られているものと同じように確かに赤っぽい。元気なものは、透明のままだ。茹でたりすると赤くなるのは知っていたが、死ぬと赤くなるとは知らなかった。実際のところ、ことの真偽はわからないが、今日の旅で少しかしこくなってしまった気がする。帰ったら早速、誰かにこの話をしてみよう。
首都高→東名高速富士IC→国道1号
◆片道所要時間約**時間
◆片道料金4,050円
カラー:アラバスターシルバー・メタリック
車両本体価格:\2,919,000.-
ワクワクするようなニューモデルだ。直線を基本にしたデザイン、ユーティリティ性の高い7人乗りでありながら、全長が4.3mを切るコンパクトサイズ。日常でもレジャーでも大活躍しそうな予感がする。そして、見た目の印象もその角張ったボディのわりにはとても親しみやすいし、頼りになりそうな存在感も持っている。一昔前のSUVの基本スタイルにのっとったデザインでありながら、とても新しさも感じる。かなり、開発に時間をかけてこだわりぬいたことが窺える、ホンダの自信作と言えるだろう。
車内空間も快適だ。無駄を省いたインパネに適度な高さを保ったビューポイント。シートのすわり心地もなかなかだ。ただし、1、2列目シートの居住性は高いものの3列目シートのスペースはかなり厳しいので、こちらはラゲッジスペースが居住空間にも変化すると考えた方が良いだろう。
走りもそつがない。無理にスポーティにふったセッティングになっていないのが、逆に好感が持てる。街乗りでも、ワインディングでも思いのままに気持ち良く走ってくれる。クロスロードのターゲットは、若いファミリー世代だということだが、もっと幅広い世代に受け入れられそうな気がする。団塊世代の夫婦2人で乗っても、別に違和感はないだろう。休日は外に出て一日を思い切り楽しみたいと思っている人には、ぜひオススメしたい一台だ。
取材協力:ホンダ 広報部
http://www.honda.co.jp/
※この記事は2007年4月17日現在の情報です