クルマで遠足

クルマに乗って、出かける気軽な旅の記録。

Vol.040

タイムズから行く、伊東の旅

タイムズから行く、伊東の旅

関東出身の人が、おそらく一度は家族旅行で足を運ぶ場所といえば、やっぱり伊豆。東京からクルマでおよそ2時間。海水浴や温泉、豊富な海の幸も魅力的です。私も家族旅行で何度となく訪れました。父が当時乗っていた赤いシビックの窓を全開にして、太陽の光と潮風を感じる。真っ青な海には岩がゴロゴロ、迫りくる崖。そんな普段とは全く違う光景にいつもワクワクしました。

小さい頃の記憶を思い出しながら、今日は私一人でハンドルを握りました。クルマはワインレッドのホンダアコード。目的地は伊東。この街唯一のタイムズ「タイムズグルメシティ伊東」と観光名所を訪ねる旅です。

昔と恐らく同じルートで、伊東を目指します。ちょっと違うのは天気かも。梅雨入りした関東地方は、今日もあいにくの曇り空。だけど、そんな嫌な雰囲気を吹き飛ばしてくれるのが、国道135号線沿いに植えてある高さ5メートル以上はあろうかというヤシの木? 気分は完全にリゾート気分。その先にはパステルカラーの建物とヨットハーバーを見つけました。

ここは日本でも有数の規模を誇る道の駅「伊東マリンタウン」。その楽しげな雰囲気にたくさんのクルマが吸い寄せられていきます。館内は伊豆の新鮮な海の幸、山の幸といったお土産物屋さんが並び、和・洋・中がそろうレストランも大充実。さらにスパを完備。海が見える大浴場と貸切風呂のジャグジーまであるのですから驚きです。海底探検を楽しめる「はるひら丸」も人気のようで、家族連れが列をなしています。伊東の楽しさをすべて凝縮したような一大空間は、伊豆観光に欠かせない名スポットといえるでしょう。

伊東の中心部は、ここからわずか5分ほど。伊東駅前の「タイムズグルメシティ伊東」にアコードをとめ、街を歩きました。欧米風だった伊東マリンタウンと打って変わって昔ながらの温泉街風情が漂ってきます。土産物屋、民芸品店、海鮮料理店。店先でおしゃべりをする女性をみると、どこの店も都会とは違い、程良くゆる~い雰囲気が漂っています。

ちょうどお昼時。伊東に来てお肉を食べるわけにはいきません。ちょっと洒落た感じの磯料理屋さんを見つけることができました。出されたのはスズキ、イサキ、タイ、アジ、ハマチ、イカの刺身盛りです。中でも、絶品だったのはイサキ。肉厚に切られた桃色の身は、口に入れてもその存在感は抜群。濃厚なのに、どこかさっぱりもしている。大人の雰囲気です。イサキを食べたのは初めてではないのに、思い出に残る味でした。刺身以外にも小鉢も3つほど。素敵なランチに出会えました。

店を出て商店街を抜けると、静かな街が広がっています。その中に、白いなまこ壁の建物が時代から取り残されたかのように佇んでいました。木下杢太郎記念館です。文学史のページに載っていたような覚えがあります。私の知識はその程度でした。他に見学者がいなかったからでしょう。係の方が丁寧に案内をしてくださいました。「木下杢太郎は、伊東生まれの詩人、作家、そして医者として活躍をしました。北原白秋や与謝野鉄幹・晶子と親しく、スバルを創刊。医師としてはあの東大医学部の教授として、水虫が菌であることを発見したのです。さらに6カ国語に通じ、画家としても優れた作品を残しています」。少しずつ興味がわいてきました。しかし、ここの記念館で、いきなり木下杢太郎の作品を読むわけにいかず、なかなか文人としての側面を掘り起こすことはできません。

私は一枚のやまゆりの絵にひかれました。58歳から死の直前の60歳まで描きつづられた872枚におよぶ植物の写生集「百花譜」の中の1枚です。戦時中の紙不足のためか、何の飾り気もない横罫の医学用箋に描かれています。白いゆりの花が首を垂れています。美しいのに、どこか悲しさが伝わってきます。やまゆりは、木下杢太郎の状態そのままのよう。絵の右下にはこう書かれています「胃腸の痙攣疼痛なほ去らず、家居臥療。安田、比留間この花を持ちて来り、後これを写す。運勢たどたどし」。自身も医者であるのだから、これが最後の一枚になることを悟っていたのでしょう。ほどなくして、亡くなったそうです。絵の中のやまゆりは、今も散らずに残っています。まるで遺言のような一枚でした。

木下杢太郎記念館から徒歩10分程のところに、もうひとつ見逃せない伊東のスポットがあります。東海館です。市の中心部を流れる松川沿いに建つ伊東を代表する温泉旅館です。平成9年に旅館業は廃業したものの、現在は伊東市に譲られ一般の人も入館料200円を払えば、気軽に見学できます。

昭和3年から13年にかけて建築された3階建ての建物は圧倒的。まず玄関屋根に彫られた鶴の彫刻。まるで有名寺院のよう。玄関をくぐれば、女中さんたちのお出迎えがあったでしょう。そして下足番のおじさんに冗談の一つでも言われたでしょう。ありありと往時の姿が思い浮かびます。玄関奥には大浴場があります。残念ながら土日のみ、湯が張られるとのことで今日は空風呂。その代わり男女両方の風呂が見られたのは、ちょっとおかしな体験。湯を吐き出す獅子、タイル貼りの床と壁は温泉旅館に相応しくないような気もしますが、当時はそれがモダンだったとのことです。

少し傾斜の強い階段で2階へ上がると客間が並んでいます。それぞれの部屋には、しっかりとした戸が付けられ、一軒家のよう。また戸脇には、ぐにゃりと曲がった木柱が小さな屋根を支えています。中に入ると、客間が広がっています。大きな部屋でも10畳ほどですので、決して広くはありません。しかし、装飾はなかなか。障子には幾何学模様や富士山のシルエットが。外からの光を受けて、今もキラキラと輝いています。客間ごとに装飾が違い、いかにこの東海館が丁寧に作られたかが分かります。そして、別の部屋のテラスには、懐かしい感じのする洋風の2脚のイスとテーブル。新婚旅行の夫婦が浴衣姿で、窓の向こうに見える松川を眺めて、一息ついている様が思い浮かびます。

3階には大広間が文字通り広がっています。なんと120畳。きっとここに数百ものお膳が並べられ、宴会が繰り広げられていたのでしょう。舞台も立派です。美しい孔雀の彫刻が、舞台をより華やいだものにしています。

最後に最上階にあたる望楼へ上りました。外は気づけば、梅雨空から青空へ。正直今、お世辞にも絶景とは言えませんが心温まる風景です。温泉街のゆったりとした空気の流れを、ここからも感じることができました。

オススメの伊東のタイムズはこちら

  • タイムズグルメシティ伊東店
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タイムズグルメシティ伊東店

取材協力:本田技研工業 広報部
取材使用車両 :アコード24TL スポーツスタイル
http://www.honda.co.jp/


※この記事は2009年7月07日現在の情報です

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