クルマで遠足

クルマに乗って、出かける気軽な旅の記録。

Vol.003

日産 X-TRAILで行く、足尾銅山

小学校の教科書に載っていたことで記憶に残っている足尾銅山。鉱毒による甚大な被害。そして、それに抗議し、戦う田中正造。ここまでは、ご存知の方も多いだろう。しかし、この足尾銅山がどこにあるのか、そして今どうなっているのかを知っている人は少ないはず。今回は、日産のX-TRAIL(エクストレイル)で繁栄とその影を追った。

足尾銅山は現在の栃木県日光市の南部にある。首都圏からなら東北道、日光宇都宮道路を使っていくのは、日光に行くときと同じだ。距離的にも中禅寺湖から南に約10km程度と驚くほど近い。街はこぢんまりとしていて、中心部といっても商店と住宅が集落を作っている程度だ。そこから程近い渡良瀬川沿いに足尾銅山観光という鉱山の跡地にある観光施設がある。

平日だからだろう。観光客の数は本当に少ない。入場券を買って、一人プラットフォームで待っていると黄色いトロッコ列車がガタゴトと音を立ててやってきた。遊園地で走っているような小さな列車だが、行き先はおとぎの国ではなく銅山だ。走り出してから、途中急にスピードが上がると、そのまま真っ暗な坑道へ突き進み、簡単なアナウンスの後、停車した。トロッコ列車は、僕を降ろすとさっさともと来た道を引き返していった。

真っ暗な坑道に残されたのは僕一人。ピタ、ピタと天井から地下水の落ちる音がする。心の準備ができていなかったからか、物凄く気味が悪い。まずは、向こうに続く坑道の先を覗きにいった。大きな鉄柵で入り口が閉められているが、ライトをパッと点けると向こう側が見える。解説によると、坑道の総延長は約1200kmもあるという。東京~博多間に匹敵する長さだ。このさして大きくない山を縦横無尽に坑道が貫いているかと思うと、ただ驚くばかり。そして、リアルなのは良いことだが、あちらこちらに江戸時代の坑夫を模した実物大人形が今も作業を続けている。坑道内の湿気が本当の汗のように、土にまみれた肌にまとわりついている。槌(つち)を振るってタガネで堀り進むのは、本当に難儀だったろう。

坑道を進むにつれて時代も変わり、明治維新後に足尾銅山は古河鉱業が管理するようになり民営化される。明治・大正時代になると機械化も推し進められ、作業効率も高められた。発破(はっぱ)で爆破し、奥へ奥へと掘り進めていったようだ。明治20年には、国産銅の約40%が足尾銅山で産出され、日本の近代化に大きく貢献した。しかし、一方では鉱毒と言う形で周辺に多大な被害をおよぼしていく。渡良瀬川の魚は死に、周辺の山の木々は枯れていった。そのせいで、大雨になると土砂が川に流れ大洪水も頻繁に起こるようになった。田中正造を中心とした抗議運動は大きくなり、政府も対策に乗り出すが抜本的な解決はできないまま時代は流れていく。

長く続いた坑道とその中の展示も終わりを告げた。足尾銅山は1973年に閉山し、鉱毒問題もそれとともに終息していく。そして、足尾銅山はこの観光施設へと生まれ変わったが、さらに当時の面影を今に残す場所があった。それは、渡良瀬川上流の愛宕地区だ。ここには、昔の鉱員住宅が残っている。こげ茶色の木造の長屋。閉山してから、徐々に住民がいなくなったのだろう。煮炊きの煙が上がることはなく、子供たちの声も聞こえない。中を覗くと、引き戸が倒れ、床も朽ち果てている。背の高くなった雑草に包まれて、ただ時が過ぎるのを待っているだけのように見える。そして、鉱員住宅の向かいには巨大な製錬所がある。こちらの朽ち方は、さらに激しい。すべてが真っ茶色に錆付き、工場の天井も抜けている。そしてきっと有毒な煙を吐き出していたのだろう、背の高い煙突も見える。まるで、空爆にでもあったかのようだ。思わず息を呑んだ。橋を渡り、中に入れないかと思ったが、古河機械金属株式会社という表札がかかっている。まだ、管理されている場所のようだ。さすがに、勝手に中に入れない。見学を申し込もうと思っても誰もいない。残ったのは、何でこんな廃墟がこのままになっているのかという疑問だけだった。

帰り道「足尾銅山を世界遺産に」という看板を見つけた。先日登録された石見銀山の向こうを張っているのかもしれない。しかし、戦中に閉山した石見銀山に比べて足尾銅山は、見るものすべてがあまりに生々しい。まだ鉱毒の爪あと、暮らしていた鉱員やその家族、今も暮らす人々の記憶が整理されていないような気がする。そして、訪れた人の心までかき乱す。この不安定な空間は、ずっとこのまま残るのだろうか。それは、良いことなのだろうか。悪いことなのだろうか。よく分からない。


今回のドライブコース=栃木・足尾銅山へ=


首都高→東北自動車道→日光宇都宮自動車道→国道120号→国道122号
◆片道料金4,100円
◆所要時間2.5時間

オオキの「これだけは言わせて!」

X-TRAIL 25X 4WD

ボディカラー:サファイヤブルー
車両本体価格2,530,000円

見た目はキープコンセプト。中味は大進化。それがフルモデルチェンジをした2代目X-TRAILだ。先代は世界で80万台を売ったクルマで、コンセプトや方向性が間違っていないことは確認されている。それが大きな自信になっていることが伺える、ニューモデルだ。

エンジンは、2.5Lと2.0L。今回、足尾銅山へともに向かったのは2.5Lの4WDモデルで、従来のオールモード4×4よりもセンサーの数を増やしたVDC(ビーグルダイナミックコントロール)を搭載している。ドライビングの状況を感知・予測しながら、最適なトルクを後輪にも配分してくれるのだ。これが、かなり走りの質にプラスに働いているのだろう。ドライバーの感性に応える走りで、思い切ったドライビングを可能にしている。

走りだけでなく、耐久性の高いインテリアもX-TRAILの特徴で、こちらもキープコンセプトだ。ラゲッジは410Lから479Lへ拡大し、26インチのマウンテンバイクの車輪を外さずに載せることができる。そして、汚れても丸洗いできるウォッシャブルラゲッジボードや防水加工のインテリアなど、抜群の使いやすさはそのままだ。

CR-V、RAV4、フォレスターなどライバル車も多いが、価格的にも比較的抑えられているし、走りも使いやすさもピカイチと言っていいレベル。また、日本だけでなく世界で大ヒットしそうだ。


取材協力:日産自動車 広報部
 http://www.nissan.co.jp/

※この記事は2007年9月25日現在の情報です

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